仕方がないことだと思うのですが、私の著書を読んだ人が、私のことを「ライター」だの「記者」だのと称呼することが多いです。
なんとも言えない違和感を感じます。
文章を買いている以上「ライター」なのは事実なのですが、私はエンジニアです。専門はネットワークとその周辺。
制御用の機械(産業用ロボット等)などがあると、ふらふらと近づいてしまい、深夜の帰宅中に、GPS衛星からの航行メッセージを聞き取れる(様な気持になれる)、そういうエンジニアです。
その他、特許法の条文番号を問われれば、書いている条文の概要(時々、嘘も言う)を言うことができ、著作権裁判の判例の有名どころが、頭の中に中途半端に入っているデータベース付きのサラリーマンエンジニアです。
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TPPも、初音ミクも、同人誌も、執筆を開始するまでは、全く知りませんでしたし、執筆を完了した後でも、その分野に深く嵌る(はまる)ということもありません。
こんな私に対して、上手いことを言った人がいます。
―― 「外部の観測者」
(「孤独の観測者」だとかっこいいんですけどね。4月20日の映画公開まで、あとちょっと)
この「外部の観測者」という呼び方は、特に「初音ミクシリーズ」では、頻発していたようです。
『外側から見ると、こんな風に見えるのか!』という、コメントを沢山見ました。内側にいる人にとって、外側からの視点というのは、有意義なものなのかもしれません。
しかし、私の技術コラム(×英語コラム)が想定とする読者は、外部も外部、超外部に存在している、私の嫁さんと二人の娘(だけ)です。
この3人が理解できるコラムであれば私としては十分なのですが、他の人も理解して楽しんで貰えれば『さらに幸せ』です。
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しかし「外部の観測者」は、しょせんは「よそ者」です。分かったフリして記載している内容は、誤記・誤解・デタラメの嵐だと思うのです。
これは「内部の実施者」から見れば、許せない程、腹だたしいことだと思うのです。
―― 高々、1ヶ月か2ヶ月、資料を読んで、関係者にインタビューしただけで、理解したような気になっている、お前ごときに何が分かる!
―― 所詮は上面(うわっつら)の正論(法律論等)を振りかざしているだけだ!
―― まったく、調査や勉強が足りん!
と言いたくなる気持ち、実は良く分かるのですよ。
今回の技術コラム(?)では、「同人誌を踏み台」にして「著作権を棍棒(こんぼう)」にして、「初音ミクの法的保護」の論を展開しているのですが、
踏み台にされた「同人誌」の世界の人達が、激怒するのはあたりまえです。
だって「踏み台」にされただけなのですから。
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例えば、私が、TCPとUDPとIPの違いを区別できず、DNSの概念を説明することなくインターネットのドメインサービスを説明した文章がリリースされたら、
または、私にインタビューをしてきた、タカビーな態度の某経済新聞社の記者のように、「GPS衛星が地球上のカーナビに位置情報を通知している」などという、GPSシステムをデタラメに説明する記事を掲載した日は、
絶対に激怒する。
そして、実際に激怒してきた。
特に、あの阿呆記者だけは、私が死ぬ瞬間まで許さんだろう、と思う。
だから、一言だけ「同人誌のことをちゃんと勉強して下さい」というツイッターのメールに込められていたであろう、「果てしない怒り」を、私は理解できていると思うのです。
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昨日読者の方から頂いたメールでは、「先に問題を解いてくれて、その解き方を教えてくれる同級生」という形容句を頂きました。
この表現も実にいいなぁと感じましたので、これらを採用して、「私」というライター(?)を形容してみますと、
―― 「初学の外部観測者」
ということになるのでしょうか。
「こんな人間が、技術コラムを掲載していていいのか」と思わない訳ではありませんが、せっかく与えて貰った場所ですので、これからも、楽しませて頂こうと考えています。
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私は「初学の外部観測者」に過ぎませんが、それが故に、ちゃんと「内部の実施者」の方からの御批判も広く門戸を開き、お待ちしているつもりです。
ですから、いくら「内部の実施者」であろうとも、「批判して立ちさるだけのモラリスト」であれば、―― それは、私の「敵」です。