『"あの"統一教会』を検証して、老後を生き残る「戦略としての信仰」を考えてみた「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(6)の「江端の未公開オリジナル原稿」(7/12 ページ)

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[江端智一]

統一教会が「嫌われる理由」

 はっきり言って、現時点の元・統一教会、現・世界平和統一家庭連合は、(A)教団と(B)信者と(C)票田として教団と使っている政治家と、(D)無関心な人を除けば、全ての日本人から嫌われている、といっても過言ではないでしょう。

 最初に申し上げた通り、今回のコラムでは、私は、統一教会を貶める意図はなく、むしろ積極的に理解しようとして、ここに至っていますが、それでも、「嫌われている」ことは、事実です。

 まあ、上記#1〜#3までは、どうしようもありません。各種の裁判、映像、資料がこれを語っていますので、ここは議論の余地はないでしょう。現在、マスコミは政治権力との癒着の追求に余念がないようです。

 これに対して、政治家の追求が弱いように見えます(錯覚かもしれませんが)。

あと、NHKが、一時期、不自然なほど、この問題に触れなかったので『まあ、政治的圧力なのだろうな』と思っていたのですが、最近、逆に不自然なほどの大量の報道が出始めています。『現場もいろいろ大変なのだろうなぁ』と思いながら、生暖かい目で、毎日7時のニュース(ニュースセブン)の視聴を続けています。

この他、以下のようなネタもあるようですが、このコラムではこの手の話はスキップします。本コラムの論点がブレるからです。詳しく知りたい方は、WikiPedia を御参照ください。

統一教会の「霊感商法」

さて、最後に「霊感商法」に関してお話したいと思います。なお、統一教会側は、一貫して「霊感商法」を否定していますが、他に適当な用語もなく、私としては、これ以外の言葉もないと思いますので、「霊感商法」で押し通します。

霊感商法とは、霊感があるかのように振る舞って、先祖の因縁や霊の祟り、悪いカルマがあるなどの話を用いて不安を煽(あお)り、印鑑・数珠・多宝塔などを法外な値段で商品を売ったり、不当に高額な金銭などを取る商法のことで、悪徳商法の一種です。

人の不幸を巧妙に聞き出し、霊能者を装った売り手が、その不幸を先祖のたたりなどの因縁話で説明する。そして「この商品を買えば祖先のたたりは消滅する、」と効能を訴えたり、「このままだともっと悪いことが起きる」などと不安を煽り、相手の弱みにつけこんで、法外な値段で商品を売りつけます。

扱われる商品としては、主に壺や多宝塔の美術品を始め、印鑑、数珠(念珠)、表札、水晶などがあります。 ぶちゃけ、このへんの説明は、WikiPediaの丸パクリです

ところが、先程、「復帰原理」の「蕩減復帰」のところでお話しましたが、統一教会から見た霊感商法は、霊感商法どころか、「原罪を持つ人類への、崇高なる救済活動」なのです。

上記のように、「私たちの見解」と「(統一教会の)信者の見解」は全く違うのです ―― 真逆です。私たちは、霊感商法をしかける統一教会の信者を人間のクズや悪魔のように見なしますし、他方、統一教会の信者たちは、私たちを「生まれながらのサタン(=肉体的”原罪”を負う者)」と決めつけているのです。

統一教会の信者たちは、「サタン!去ね!」という、そのへんの人間には絶対に実施不可能な、「教団の信徒にしかできない奇跡」を出血大サービスで提供しているのに、なぜ世間様から責められなければならないのかかが、分かりません。

しかし、私たちは――『本当に分からないのか? 嘘だろ? 分かるだろう、そのくらいのこと』 ――と、普通に思いますよね。どの時代のどの世界であっても、その時代に応じた社会通念があり、それぞれの時代と世界において、逸脱してはならない一線があるはずです。

少なくとも、現在のわが国においては、子どもや伴侶に先立たれた人間に、『地獄で苦しんでいる』などと言っていいような社会常識は存在しないし、自己破産の概念もないような人間からの寄付があれば、それを止(とど)めるのが人道です―― そんなことは、難しい経典なんぞで必死に勉強しなくても、自分の頭だけで簡単に辿りつくことができるはずです。

なぜ、それができないのか? 自分の頭だけで辿りつける思考回路が、他人によって破壊されているからです。それを、一般的に「洗脳」と言いますし、もし壊されていないのに実施しているのであれば、それは「思考放棄」という自己否定です ―― が、そんなことを言ってみたところで、詮無い(せんない)ことも、私は知っています。

なぜなら、統一教会の完成形は、信者の「洗脳」であり「思考放棄」だからです。

統一教会 ―― 総括

最後に、私なりの、統一教会のまとめをしてみたいと思います。

冒頭で、私は、カルトを次のように定義しました。

(1)反社会的、違法、または、社会通念上の常識に著しく反する信条を持ち、

(2)上記(1)を信仰という手段で実施する団体(宗教団体)、またはその構成員(信者)

聖書の内容を踏みにじることや、”原罪”論の拡張は、別に信条の自由ですので問題ありません。しかし、自由恋愛結婚を否定する「合同結婚式」などは、社会通念上の常識に著しく反すると言えますが、これも、ぶっちゃけ「個人の勝手」です。

そもそも、統一教会がカルトであろうがなかろうが、いかなる宗教団体への入会も、信教の自由(憲法第20条)が認めている国民の基本的権利です。

しかし、心理的恐喝による法外な値段の物品セールスや、自己破産を看過する寄付などの「霊感商法」は、明らかに非人道的かつ反社会的です。そして、現時点においては、違法行為になっています(平成30年、消費者契約法第4条3項6号)。

3 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる

六 当該消費者に対し、(A)霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に(B)重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより(C)確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

というか、この法律は、統一教会が引き起した大量の金銭トラブル事件によって、制定されたものです。

この法律が制定された平成30年とは、2018年、つまり、たったの4年前です。私がこの問題を知っていたのは、1985年くらいですから、私の知る限り、この霊感商法は、私の知る範囲では最低でも33年間は、放置され続けていたということです(宗教法人の認可を受けた1964年から起算すると、54年間にもなります)。

しかし、上記の法令を深く読んでみると分かるのですが、「(A)自分は霊が見える」といい、「(B)不安をあおり」「(C)『不利益を回避できる』旨を告げる」という、3要件がそろわなければ、霊感商法の契約取消(返金等)は成立しない、のです。

つまり、「自分の意思で自分名義の財産を統一教会に寄付をする」ということについては、この法律(第6号)は発動しないのです。その結果、自己破産しようが、家庭崩壊しようが、それは自己責任となり、統一教会には、法律上の返金の義務は発生しません。

加齢や病気による判断力が低下していることを知りながら、「生活が難しくなりますよ」と不安につけこむようなやり方であれば、消費者契約法第4条3項5号の適用がありえますが、高齢でも病気でもなく通常の生活ができている人には、これも通用しません

総括します。

―― 統一教会の運営は、(自分の全財産を自分の意思で差し出せるような)狂信的な信者を”作り出せる”か否かにかかっている

と、いうことです。