『"あの"統一教会』を検証して、老後を生き残る「戦略としての信仰」を考えてみた「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(6)の「江端の未公開オリジナル原稿」(4/12 ページ)

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[江端智一]

統一教会の独自かつ斬新な解釈

さて、統一教会の教義は、キリスト教の命とも言える、この"原罪"ストーリーに、壮大なラクガキ・・・もとい、上書きを行います。

イエス・キリスト製ワクチンは、”魂(スピリッツ)の原罪”には効果はあったが、肉体(フィジカル)の原罪には、その効力が及んでいない、という、壮大なシナリオ変更をぶっこんでくるのです。この肉体版”原罪”のワクチンとなるのが、文鮮明(-2012)という韓国の人です。

文鮮明さんは、イエス・キリストは完全な”原罪”ウイルス向けワクチンを提供していないと、イエス・キリストに対する壮大なディスリスペクトをかました上で、自分こそが最終救済者(メシア the final)であると言い切っているのです。なるほど、これは、世界中のキリスト教徒が激怒するはずです*)

*)ただ、世界中のカルトの教祖のほぼ全てが、「自分こそが”メシアthe final”」と主張しているので、逆に、「ありふれている」と言えるかもしれませんが。

統一教会の目的が、肉体向け”原罪”に対抗するワクチン接種であると考えれば、その教義の内容はすんなり理解できます。mRNAのようなワクチン接種では、肉体向け"原罪"の消滅はできないので、文鮮明さんは、大量のカップル(=夫婦)で、この問題を解決しようとしています。

つまり、原罪をうまいこと消滅できるカップルの組み合わせを、文鮮明さんが一人でがデザインするのです。その組み合わせ数は、実に数千とか数万とかの単位です。しかも、その数の男女の顔写真と全身写真だけを使って、そのマッチングを実現するのです。

ちなみに、私、コンピュータを使った組み合わせ問題のエキスパートでもありますので、この問題の困難性を完璧に理解しています。おそらく、完璧な量子コンピュータが開発されたとしても、この組み合わせを完成させるのには、宇宙の年齢を、宇宙の年齢分繰り返しても、全然足りないくらいの時間が必要です*) ―― 本音を言えば「なめんとんのか」と腹を立てています。

*)「NP困難問題」でググってみてください

しかし、そこは、”メシア the final”です。肉体版”原罪”を消滅させうる超高度な医学的(遺伝子学)組み合わせを、写真だけで見抜き、膨大(という言葉では語れないくらいの膨大)な組み合わせをデザインすることができるのです。

これこそが、豪快かつ壮大な自由恋愛結婚の完全否定 ―― 統一教会の合同結婚式*)です。

*)関連記事:「合同結婚式の記事

すなわち、統一教会の合同結婚式は、肉体版"原罪"を消滅させうる手段として、絶対に避けて通ることができない一大イベントなのです。