『"あの"統一教会』を検証して、老後を生き残る「戦略としての信仰」を考えてみた：「お金に愛されないエンジニア」のための新行動論(6)の「江端の未公開オリジナル原稿」（5/12 ページ）
統一教会の教義について俯瞰する
ここで、統一教会の教義について俯瞰してみましょう。統一教会の教義である「原理」は、「創造原理」「堕落論」「復帰原理」の3つから構成されています。
まず大原則として、聖書の内容と、「原理」の内容に矛盾が生じた場合(というか、当然に生じるのですが)には、「原理」の解釈が優先されます＊）。
＊）「原理主義」と言えば、タリバンやイスラム過激派のような、経典絶対主義のようなイメージですが、統一教会の「原理」は、『聖書の内容を踏みにじる』という点において、極めて特殊です。
ここからは、私の独自の見解になりますが、「創造原理」とは、オブジェクトモデルにオブジェクトの運動のメソッドを加えて、オブジェクト間の相関を説明したもの、のように読めました。
さらに、ここに聖書の話を随所につっこんで完成させたら、こんな風になるのかな、という感じでした。
「創造原理」の内容に、奇妙な「理系くささ」を感じたので、文鮮明さんの履歴を調べてみたら、「早稲田高等工学校に通って電気工学分野の勉強」をしていた、との記述を見つけました＊） ―― なんだ、同門(？)か(私も電気工学の修士です)、と思いました。
＊）（「文鮮明」のウキペディア）
とすれば、この「創造原理」は、私のやり方(エンジニアリングアプローチ)で評価できる、と考えました。
テクニカルライティングの観点から言えば、もう少し分かりやすい書き方ができだろうに、と思いました。この世界の創造原理を、オブジェクトを使って説明するのであれば、図表を使えば良かったのです。
統一教会の信者の方に、UML(Unified Modeling Language)などを使った、その「創造原理」の改訂版を作ることを提言します。統一教会は、知的エリートを擁する集団でもあるらしいので、多分可能だと思います。
この「創造原理」を読んでいるうちに、統一教会の信者に高学歴者が多いというのも、なんとなく納得できてきました。エリートたちは筋の通ったロジックに、恐ろしく弱いのですよ。『え？そんなことも、分からないの？』と挑発するだけで、彼らは簡単に転びます。チョロいです。
詳しくは、こちらの、「よく分かんないけど、嫌なものは嫌なの!!」と言えない研究者たちの話を御一読ください。
ヘビとアダムとエバの3P(Three persons SEX)
では、次に「堕落論」について説明します。すでに説明しましたが、敢えて下品な言い方を選ぶとすれば、「ヘビとアダムとエバの3P(Three persons SEX)」による、純潔からの堕落の話です。
純潔な夫婦を規範とする統一教会の教義からすれば、これは堕落の極みといえるものであり、最優先の検討課題です ―― まあ、アダムとエバ(=イヴ)の子孫とさている(？)私は、『先祖のことなんぞ、知ったことか』と思いますが、そこはそれ、これは「宗教」ですから。
最期に、「復帰原理」になります。統一教会の「原理」で、もっともバラエティに富んでいるのが、「復帰原理」です。これは、聖書で言うところの「イエス・キリストを信仰することによって、全ての原罪から開放される」という話に似ているのですが、この「復帰原理」には、原作(聖書)にはない、かなり面白いパラダイムが登場します。「蕩減復帰」です。
前述した通り、人間の”魂”の原罪ウイルスは、イエス・キリスト製ワクチンによって対応済みなのですが、”肉体”の方の原罪は、まだ”不純”状態が続いています。
つまり、不完全な”原罪”解消状態でフラフラしている、という状況です ―― これも、「量子論」の話に似ていて、理系くささを感じるパラダイムです。
このフラフラ状態を、完全かつ安定な状態にする ―― 蕩減(とうげん)(朝鮮起源の漢字語)、つまり「借金をチャラにする、免除する」という考え方が登場し、借金をチャラにするなら、その対価(あるいは代替物)が必要だ、というロジックが導出されます。
さて、ここまでの「復帰原理」の話をまとめると、こうなります。
(1)我々は中途半端な”原罪”を背負った状態にある
(2)この”原罪”をチャラにするには、対価が必要だ
では、その”原罪”の原因になっている”ブツ”とは何か？ それは人間を堕落させている決定的なもの、「金(カネ)」です。 「金(カネ)」が悪いのです。その「金(カネ)」を取り上げて、良いものに替えてやる(代替させる)ことが、絶対的な正義であり、神の御心に沿うことです。
では、その代替品は何か。もう明白ですよね。”壺”、”数珠”、”経書”、”高麗人参”です。このありがたいモノで、原罪の原因である、最悪の要因である「お金」を、できるだけたくさん除去しなければならないのです。それは、統一教会の信者の崇高な義務ですらあります。
あれ？ じゃあ教団は、原罪の原因である「お金」が集ってきて、困るのではないのか？と思いますよね。ところが、どっこい、大丈夫なのです。教祖”メシア the final”は、それらを浄化した上で、教団の運営に使っているのです。偉大なる教祖は「マネーロンダリングマシン」です。私たちとは、格が違うのです。なにしろ、教祖はメシア(救世主)なのですから。
さて、「創造原理」「堕落論」「復帰原理」の3つをざっくりと私なりに解釈してみました。このように、読めば、統一教会における「合同結婚式」も、「霊感商法(教会は否定)」も、非常に(信者にとっては)、極めて合理的かつ、筋の通った活動であることが分かると思います。
もうこの段階で、読者の皆さんは、統一教会の呆れるばかりの屁理屈・・・もとい、「独自かつ斬新な解釈」を読まされて、うんざりされているかもしれませんが、読者の皆さんは、がんばって『分かった気』になって、がんばって下さい。
続けます。