兵庫県福祉センタの4階には、ボランティアの人のために教室が借りられていました
。一日が終わって、関係者がその部屋に集まってみれば、朝日ボランティアセンタの
専属のスタッフが数人と、私と同じ有志のボランティアが5人ほどいました。
和田さんとおっしゃる女性は、愛媛からお米を30キロ持ってやって来ていました 。「子供達に『ボランティアに行ってくるよ!!』と言ったら、『行ってこい!行って こい!!しばらく帰って来なくていいぞ!』と激励されてしまったわ。」と陽気に語る 品の良い御婦人でした。「ボランティアの最前線はねえ、あなたのような『独身貴族』 と『子育ての終わった主婦』なのよ。」と言う主張は、私の考えと一致するところがあ り、私は和田さんと意気投合してしまいました。
加藤さんは、初めて見た時「土建屋の親分」と言う感じがしましたが、実はお寺の住
職さん。少し乱暴な言葉が目立つ人でしたが、私にしては珍しく、第一印象で気に入っ
てしまいました。和田さんの話によると、両親のいない子供を引き取っては育てている
住職さんだそうです。
和田さんと加藤さんの二人は、明日行う予定の「お粥300リットル」を作る鍋の確 保に走りまわっていたようでした。鍋は直径1メートル、深さ50センチの大きなもの で、しかも3つ必要で、さらに明日の炊き出しが終わると返却しなければならず、その 後の炊き出しのスケジュールが維持できないので困っているとのことでした。
私がポソリと「・・会社で買って貰えないかなぁ・・」とつぶやくと、二人とも「え っ!!」と大きな声を上げて、私の方に身を乗り出して来ました。
そんな訳で、私は会社に鍋を買ってもらえるように打診する事を約束させられてしま いました。
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で、お願いなんですけど(総務あてになるのかな)
鍋を一つ買っていただけませんか(60k円くらいと推定)。一応仕様や製造メーカや値 段はすぐに調べられます。
勿論、朝日ボランティア(朝日新聞厚生文化事業団)への『貸与』と言う形で貸し出
すだけでも、とても喜ばれると思います。何卒御一考をお願いします。どこに行くか分
からん義援金一億円より、取り敢えず『今すぐに』役に立つはずです。良いお返事をお
待ちしております。
閑話休題
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その夜は、寝袋にくるまって、その教室の床の上で寝ました。
最近、朝方酷い背中に走る激痛で目が醒めるのですが、その日もやはり夜中に起きて しまいました。
教室を出て、コップに水を汲みに行き、鎮痛材を飲みながら4階の階段の踊り場から 近くの民家を見下ろしていました。繁華街あたりは灯が戻ってきているようですが、破 壊の限りを尽くされた民家の一帯だけは、一つの灯もともっていない完全な闇の中にあ りました。
『いつ灯が帰って来るのだろうか・・』と考えながら、恐らくはもう二度と住む人が 帰って来ることのない崩れた家屋を見ていました。