次の日の23日、ビルの6階にある予備校の姫路センターで、天井まで続いている大 きな窓から、空を見ていました。
講義室のそれぞれの一角には机が置かれていて、パーテッションで区切られていたの
で、誰にも邪魔される事はなく、机に寝そべりながらぼーっと空を見ていました。
ここ数日のどんよりした天気からは信じられないくらい、雲一つなく晴れ渡った透き
通るような青空でした。視界のやや中央より上のほうに、一条の飛行機雲が真っ直ぐ
に伸びて行きました。飛行機からほんの少しだけ後ろに離れた処から、線のような細
い雲ができて行きます。やがて細くて際立っていた白も広がり色が薄くなっていきま
す。
午後3時。
あの娘は私が見えているだろうか。
今はどのあたりにいるのだろうか。
受付の女の子が、声をかけています。
「江端先生?」
生徒がやってきた事を私に知らせています。
私は教材を手にしながら席を立ち、最後にもう一度だけ振り返って空を見上げて、講義室に向かって歩いていきました。
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