先日、同人誌関係の方へのインタビューを行っていた時のことです。
ノートにメモを取りながら、「どうにも、全体感が掴めんなぁ」と、頭を掻きながら、愚痴っていた時です。
『だったら、江端さん、コミケに参加したらいかがですか』
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コミックマーケット、通称「コミケ」。30年以上の歴史をもつ日本最大の同人誌即売会。
通常は、年2回、夏と冬に東京国際展示場(東京ビックサイト)全ホールを使って開催され、のべ入場者数約50万人という、おそらく世界最大規模のイベント。
断片知識として、「入場に6時間かかる」という話も聞いたことがあります。
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冗談ではない。
体力もないけど、ディズニーランドで20分待つのも嫌いな私が、素人のコンテンツ売買イベントなんぞに、参加できる訳がありません。
著作権問題が解決されていない作品の取引を見ているだけで、私は怒り出すかもしれない。
無用な紛争を起こすことが判っていて参加するなど、愚の骨頂です。
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『いえいえ、そうじゃないです、江端さん。出店の方です』
―― 出店? 私に漫画なんぞが描けると思っているのですか?
『いや、そうじゃなくて。コラムやエッセイを出せばいいじゃないですか。江端さんのブログを纏めて冊子にしてもいいと思いますよ』
―― え? コミケって、文章も出せるのですか?
『コミケの精神は、「ノンセクションの自己表現」です』
自慢されてしまったようです。
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うーん、そう来たか。これは、予想もしなかった展開です。
「初音ミクコンサート」の参加は娘に随伴を断わられましたが、消費者でなく、提供者としての参加というのは、ちょっと、そそられるものがあります。
同人誌関係は、法律からのアプローチしかしていないが、現場を踏むという想定はしていませんでした。
これは、なかなかコラム魂に火が付く話です。
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―― しかし
今迄、寄稿してきたコラムの内容を省みると、コミケ会場で、関係者から袋叩きにあうんじゃないか、という恐怖が、皆無という訳でもありません。
おそらくは一冊も売れないであろう、私のブログ印刷物を見ながら、ブースに座り続けるのは、相当な苦痛でもあろうと思われます。
そのブースで、一人、黙々と原稿を書いている自分が、簡単に想像できてしまいます。
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結論:うん、やっぱりダメだな。
あの時は「考えておく」と言いましたが、現時点で、その気はなくなりました。
しかし、これを読んだ編集担当者さんから『是非行って下さい』と言われたら、ちょっと困るな。