結婚式のスピーチ(その4)



next up previous
Next: 悪夢の共通一次試験 Up: 江端さんのひとりごと'95 Previous: 久保川号、炎上!

結婚式のスピーチ(その4)

ただいまご紹介にあずかりました、新郎の大学時代の友人で江端と申し上げます。

本日は、こちらの新しいカップルの直々のご指名を承りました。

新郎に「どんな話がいい?」と聞いたところ、「何でもいいよ」と大変寛大な返事を 頂きました。多分宇野君はこれからの人生で、このスピーチに私を指名したことを、酷 く後悔して生きて行くことになると思いますが、彼らのこれからの人生において大きな 大きな教訓として生きて行くことになると信じ、本日のスピーチさせて頂くことにいた します。

---------

私が宇野君と初めて出合った場所は、大学4年生の電気機器研究室のロボット研究セ クションのゼミでした。私達はお互いに助け合いながら、研究を続けていました。彼は 非常に謙虚な達でことあるごとに「江端の研究パワーに見習わねば。」とか、「俺はも っともっと勉強しないと。」と普段から自分を啓蒙する、まっすぐな性格な研究熱心な 好青年でした。

確かに、研究に関してだけは。

---------

ゼミの夏合宿で、ゼミ全員で避暑地のリゾートに行った時の話です。

ロボット班の宇野君、中筋君、そして私はリゾートホテルのプールで、だれもプールに いないことをいいことに、3人で水泳の競争をしたり、プールサイドにあった、パラソ ルのついたテーブルと椅子をプールの中に叩きこんで、水中でどのくらいの間、その椅 子に座っていられるか競いあうなど、めちゃくちゃなこともやっていました。

そうしていると、宇野君が新しい遊びを考え付いたように私に言いました。

私は言葉を失いました。

 

宇野君は自分の考えたそのゲームが随分気に入ったようで、勢い込んでさらに続けま した。

 

私は、いまでも宇野君のあの生き生きとした輝いた瞳を忘れることが出来ません。

勿論シャイな私は、宇野君の申し出を丁重にお断り申し上げたのですが、この時私は 、彼の独創的な物事の考え方に大変な敬意を払うとともに、「これからの人生で決して 彼を敵にまわしてはならない。」と深く肝に命じたのでありました。

---------

それはさておき、

宇野君と私は大変仲がよかったばかりか、女性の好みもとても良く似ていまして、本 日新婦京子さんに初めてお目にかかり、さらにこの思いを深く確信したのでありますが ・・・。

ロボット班のゼミの先輩が、ある女子大学との合コンの話を持って来ました。なんと いうんでしょうかね、ひたすた研究の徒でありました私にとっては、そのような話は大 変煩わしく断りたかったのですが、先輩の命令であったので、『やむなく』私は、宇野 君やこの他、古田さん、東野さん、植田さんとおっしゃる方と一緒に参加したのです。

そこで、私と宇野君は一人の女の子と出合うことになります(名前は忘れてしまいま したが)。私は偶然にもその女の子がとても気に入ってしまい、合コン中、私と宇野君 は彼女にあれやこれやと話しかけていました。

店を出て彼女達と別れてから、人通りの少ないところに来た時に、宇野君はぼそっと 私に言いました。

 

コンパが終わって部屋に帰りつくと、留守番電話に宇野君からのメッセージが入って いました。

 

次の日、私がゼミに行くと、宇野君がやって来て、私に言いました。

 

わたしも高々、龍田丼で諦めるほど安易な気持ちではなかったので、ロボット班の 最強パートナと呼ばれていた私達は、一人の女の子を巡ってたちまち険悪なムードと なってしまいました。

が、ゼミの皆はこんな私達を面白そうに見ているだけで、何の仲裁をしようとすらし ませんでした。

この現状を打開するために、宇野君は私に対して紳士協定を提案します。それは、

『これから一週間の間、一日おきに彼女に電話することにして、決して出し抜かないこ と。そして、どちらが彼女を射止めても決して怨まないこと。』

という内容のものでした。

そして、私達はその協定をきちんと守り、彼女を落とそうとしたのですが、ついに彼 女は一週間の間一度も電話にでてくれることはなく、私達は二人とも振られてしまった のでした。

『俺達、だめだったなあ〜』と笑いながら、私の下宿で酒を飲んだのが昨日のことの ように思い浮かべることができます。

---------

京子さん。この話は7年も前の話で、我々は共にふられたのですから、これをネタに 宇野君を苛めたりしないようにお願いします。

---------

私はそんな風に、何かに一生懸命になったり、誰かをまっすぐに好きになる宇野君の ことがが、とても大好きですし、いまでもその気持ちは少しも変っていません。彼はい つでも誰よりも正直に誠実に私に接してくれました。彼は、すべてを如才なくこなすタ イプではないかもしれませんが、いつでもゆっくり、しかし一生懸命に何事にもぶつか っていく人間です。

京子さんも、宇野君のそんなところを好きになられたのではないかなあ、などと思っ ています。

お二人がこれまで、どのような季節を過ごして今日のこのよき日に至ったか、私には 知る術もありませんが、私の知っている宇野君と、その宇野君を選んだ京子さんの未来 が、単なる幸せでなく、とてつもなく面白いものになるような気がして、私はわくわく しています。

願わくば、これからもちょくちょくお二人の御近況を、御連絡していただければ嬉し く思います。

 お二人の末永いお幸せを,心よりお祈り申し上げ、私のスピーチとさせて頂きます。 ご静聴ありがとうございました。



Tomoichi Ebata
Sun Feb 4 19:07:50 JST 1996