「Let me say "Thank you"」
膨大な英文ドキュメント、英語による技術者との議論、開発途上で不完全なライブラリ群に、私が血の涙を流しながら取り組んできた製品、PolicyXpert(PX) Version 2.0の製品リリースの期日が決まりました。
思い返せば、今年の3月、何が何だか分からないうちに米国赴任が決り、いきなり、日立とヒューレットパッカードの技術者たちの日英・英日翻訳ゲートウェイをやらされのたのを最初に、数多のシステムダウンを目の当りにしながら、胃を痛めた日々が、走馬燈のように・・・って、まだ、プロジェクト終っていないんだけど、とにかくリリースまで漕ぎつけたことに、想い浸ること多であります。
ところで、この製品(PX V2)は、インターネットプロバイダや、電話会社のネットワーク管理などを想定していますが、やろうと思えば、自宅のホームLANのネットワークのQoS(*1)管理もできます。
ご興味のあるかたは、是非御購入をご検討下さい。
(*1)Quality of Service ネットワークの通信品質のこと。電話の声がとぎれたりするネットワークは、「QoS管理されていない」などの言い方をする。
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先日、日立側のチームメンバであるIさんと、次のバージョンのPXの実装方式に関して議論をしていました。
ネットワーク技術の分野は、非常に進歩が速く、製品の市場投入のタイミングを逃すと、莫大なコストをかけた挙句、まったく役に立たない製品を開発してしまうことになるので、どのような機能を、何時までに完成させるか、ということが大きなポイントになるのです。
その上、標準化の問題(*2)やら、ビックベンダの動向、なにより、我々の技術力が問われます。
(*2)江端さんのひとりごと「IETF惨敗記」シリーズなど
Iさんのパーティションのホワイトボードの前で、我々が話をしているところに、開発チームを統括するジェネラルマネージャのヘンリーさんがやってきました。
ヘンリーさんは、笑顔で私達に語りかけてきました。
「昨日、PX V2のコードのバグが減少方向に転じたと言う報告を受けたよ」
勿論、私達はその報告を、チームミーティングで報されていました。
製品を開発する以上、可能な限りバグを潰し、安定度を高めなければならないのは、システムエンジニアの宿命です。
ヘンリーさんは、「遂に、終りの始まり(start of the end)だね」と言った後で、「君達の多大な努力に、心から感謝している。もう一度、ありがとうと言わせて貰えるかな」と言いながら、私達に握手を求めて来ました。
おどおどと差しだした私の手を、ヘンリーさんの大きな暖かい手が包んでくれたのを、漠然と覚えています。
パーティッションを立ち去るヘンリーさんの後姿を見ながら、私は両手の拳を口のところに持って行って、すんでのところで『ステキ!』と叫んでしまうところでした。
勿論、私だって、ヘンリーさんの言葉が「リップサービス」ということは分かっています。
でも、開発の最前線でコードに埋もれながら、バグと格闘している技術者には、このような、ほんのちょっとしたフォローが、心に染みたりするものなのです。
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さて、日本で働いている皆さんに質問です。
最近、大きな仕事を終えた後、「君達の多大な努力に、心から感謝している」と言われながら、部長から握手を求められた人。
いますか ?
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