2020/04/30
コンテンツ提供:シバタ医師
掲載責任者:江端智一
seed-duplex
stabilty (Tm)
ざっくり言って、2本鎖の安定性のこと。
Tmとは melting
temperatureの略。直訳は融解温度。決して融解しているわけではないが、歴史的にこのように命名されている。50%が1本鎖に解裂(融解と表現)すると見込まれる温度のこと。
2本鎖RMA(2本鎖DNAも同じ)は、温度が高くなると分子の運動エネルギーが上がると、塩基の水素結合の安定性だけでは2本のDNAやRNA鎖がお互いにくっついていられなくなり、バラバラになり、1本鎖になる。
温度が下がって分子の運動や周囲の水分子の運動が落ち着いて塩基のペア間の水素結合の安定性が優位になると、2本鎖に戻る。
水溶液中で何%が乖離しているか、結合しているか、というのが、温度によって確率的に決まるということ。
50%が融解(乖離)、結合している温度を、Tm値と呼んで、その分子の2本鎖を保つ力(安定性)の指標にしている。
siRNAは、Tm値が高いとOff-target効果が高い(ターゲットでは無いものまで切断してしまう確率が高い、つまり、特異性が低い)。
逆に、Tm値が低いと、off-target効果が低い(ターゲットでは無いものを切断する確率が低い、つまり、特異性が高い)。
この性質は、理由ははっきりしていませんが、実験によって確認されている傾向です。図だと、青が濃いほど「Tm値が低い」=「off-targetが少ないだろう」=「特異的に作用するだろう」ということです。
functional
siRNA selection(Ui-Tei)
東京大学のProf. Ui-Tei(程教授)のプロトコルでうまく機能しそうなsiRNAを選んだ、ということです。
ぶっちゃけ、siRNA配列の候補は、機能するしないを考慮しなければ、どこから20文字前後を選んできても、候補になってしまう・・・、そういうものなのです。
本当にびっくりです。
よく発見したなぁ・・・。納得のノーベル賞でした。なので「きちんと機能しそうな配列を選ぶ」ということが大切です。そのためのプロトコルが、たくさん報告されたり、秘蔵されたりしています。
http://sidirect2.rnai.jpのページでは、デフォルトでは東京大学の程先生のプロトコルで選択しています。
このホームページが、程先生のホームページだからだと思います。
オプションで選択すれば、他の先生が提唱したプロトコルを組み合わせて検索することも可能(検索結果はざっくり言って8割前後はかぶるという印象)になっています。
ちなみに、商業ベースでsiRNAを販売しているメーカーは、「我が社こそは最も高品質、高特異度、高効率のsiRNAを設計できる者なり!」とその精度を競っています。
各社に抗SARS-CoV-2 siRNAのコンペティションでもすれば、各社設計に1日未満、データ付きでも上質の候補が2〜3週間程度でそろうと思います。
きっと、すでに実行されています。
specificity
check: minimum number of mismatches against any off-targets;
(江端推測:オフターゲット効果を回避するためには、標的以外のすべての遺伝子に対して、配列のマッチングが最小となるsiRNA配列を選択することが望ましいだろう(多分) → ということは、この『最小値』が小さいほど「良い」ということかな?)
江端さんのおっしゃる通りです。
ヒトゲノムは全ゲノム、複数データが報告されていますので、おそらくはその配列(30億塩基対にコードされているmRNAの全情報のセットかける複数ソース)を自動でインポートして見比べつつ、特異性がちゃんとあるかどうか、チェックする機能のはずです。
しかし、残念ながらどうやら「ヒトmRNA」に対しての特異性チェック機能が現在Webでは動いていないようです。
オプションで「マウスmRNA(Mus Musculus)」に対する特異性に変更したら、上手く機能しました(マウスに対する特異性が分かっても、今回は意味がありませんが)。
無料ホームページなので、こういうこともあると思います。
多分、ヒトのdata baseへのリンクが切れているのだと思いますが・・・。
以上