こんにちは、江端です。 Nakayama worte on Tue, 28 Jul 1998 19:05:57 +0900 > 『超豪邸、別荘はもちろん、リムジン、クルーザー、自家用ジェット・ヘリから > ダイヤに金塊まで、欲しいものがなんでも手に入れられる!』  わはははは。  笑ってしまうな、この世俗的な「欲望の具現化」が陳列している様と言うのは。  この広告が、如何に知性の低い人間に向かってアピールしているかがよくわかる と言うものです。 > 読者の体験談の中にイカス文章がありました。(大分県 八島久美子さん 37歳) > 大略は以下の通り。 > ---------------------------------------------------------------------- > サイパン旅行に行った時、おみやげ屋で100ドル札を出したところ、 > お釣が30ドルも多かったんですぅ! > それと、ジェフリーという肌の黒い現地人と仲良くなって > (えるかん註:たぶん金で買ったんだろう)、一緒に食事した時、彼ったら > 「日本人、大好きだから、ごちそうします」だって! > もう、信じらんなぁい! > 再会を約束して、涙ながらに帰国した私でした...。 > ----------------------------------------------------------------------  「アホか・・・」と一蹴する前に、この文章に包含された本質的な意味の解読を して見たいと思います。  とうぜん、この体験談の八島久美子さん(37歳)は大分県は勿論、地球上には存在 してません。これは、いわゆる5流のライターが創作した陳腐極まる文章ですが、 一応広告主のメッセージが込められているわけです。  この状況の基本格子は次の3つ。 (1)サイパン旅行、 (2)30ドル、 (3)リゾートラバー(リゾラバ)  さて、この「亀力」なる超能力が提供したサービス(と見なされるもの)は、 (2)(3)です。 登場する人物の属性は (1)女性 (2)37歳 (3)大分県出身  人物の属性がもつメッセージは、(a)OL (b)独身 (c)地方出身者  ということくらいです。 ----- さて、もしもこれが次のような状況、および人物であったら、この物語は どのように転じるでしょうか?  (東京都文京区出身 八島久美子さん 21歳) ----------------------------------------------------------------------  外交員としてスイスに赴任している父の所に夏休みを使って避暑に行った時、 父へのお土産に購入したジダンのライターをトランジッドの途中の空港で購入 した時、お釣が30ドル多かったんです。  それと、父のお供で出かけた地元の伯爵夫妻のパーティで、ケンブリッジで 経済学を専攻した後、事業を始めたジェフリーという青い目のイギリス人と 一緒に食事した時、彼、「日本人の方にはいつもお世話になっています。ですから ここはごちそうさせてください」ですって。ちょっと素敵な感じの方でした。  再会を約束して、帰国した私でした...。 ----------------------------------------------------------------------  さて、この文章の何処に「亀力」を感じる事ができるでしょうか。  まず、「亀力」を納得させるためには、 (1)庶民のレベルを再認識させる。 (2)あまり幸せでない私がいる事を認識させる。 (3)理解が出来、かつ手に入る幸せのレベルを提示する。  そして、  「なるほど、『亀力』なるものなら、確かにこの幸せは手に入る!」  と確信させるレベルにとどめなければならない訳です。  わかりますね、皆さん。  この広告は、我々庶民の幸福のレベルを定義している訳です。