こんばんは、井上です。 In[kobore 1725] Re: Mr.Ebata's Small Talk(Movable Object)で、 EbataTomoichi, ebata@sdl.hitachi.co.jpさんwrote: > 箸置きは、箸置き以上の存在ではないと言う事実は、被験者に投影された。それ >は、被験者の意識下に「自己の存在意義」と言う古今東西全ての人間が一度は苦し >む難問を投げかけたのである。 > その時被験者の中に、自己存在を否定されない危うさが意識下に発生した。そし >て、その現象が意識上に上がってくる前に、その問題を投げかけるオブジェクトそ >のものに対してそれを打ち消すための精神的な攻撃(サイキックアタック)が行わ >れたのである。 ふっふっふ・・・ドクター、いやマスター・エバタ、とうとう私の正体を 見破ってくれましたねぇぇ・・・? さよう、私は「お箸置き」を憎んで いた。主人の実家でさえも使っていなかった「お箸置き」・・・。しかし、 私は結婚式の数週間前、輝かしい理想の新婚生活を夢見て、わざわざ銀座 『たち吉』にまで足を運び、色といい形といい、本物そっくりの素晴しい 「唐辛子型お箸置き・5個セット」を手に入れた。ああ、これに紫檀の素 朴なお箸を休ませたら・・・赤絵のお小皿に、その一対はどんなにか合う かしら・・・。そう、「唐辛子型お箸置き」は私の、いや愛と共に生きる、 『新しい私』の象徴だった。愛そのもののフォルムだった・・・。 だが、結婚してわずか1カ月のある晩・・・その愛そのものだった「唐辛 子」の一個を、私はふとした不注意から床に落としてしまったのだ・・・。 フキンを手に、驚愕と絶望に目を剥いている私の前で、陶製の「唐辛子」 はスローモーションのようにゆっくりと、固い床を目指して落下していく。 パリーンン・・・ッ! 唐辛子の小さなヘタが折れて、ゆっくりとふっとんで行った。ああ、愛が 割れて飛んで行く。輝かしい理想の新婚生活が飛んで行く。 ・・・それからは、己の不注意への後悔に苛まれ、後悔はいつしか、先の 折れた唐辛子そのものへの呪祖となり、そして、大枚をはたいて壊れやす い陶器の「唐辛子」に愛を託そうとした己の浅はかさ、いや、理想の新婚 生活の形を「唐辛子」にしか見い出せなかった、己の自信の無さを憎むよ うになった・・・。 私は、私専用となり、いつも私のお箸を休ませていた「ヘタの折れた唐辛 子型お箸置き」を、いつの間にか激しく憎むようになっていたのだ・・・!! その、何の罪もないお箸置きが、数年を経てどんな運命を辿ることになっ たかは、今さら繰り返しますまい。 全ては、江端さんの看破された通り・・・。 唐辛子、あの時は、すまなかったわねぇ・・・。四次元でヘタが折れてい るのは、肩身が狭いでしょう? 戻っておいで。もう、平気だから。 ああ、でも、自分が怖い。唐辛子が喜んで戻ってきたら、また無意識に異 次元空間まで吹き飛ばしてしまうかもしれない、サイキックな私だもの・・。