英会話スクール出逢い機関論

江端さんのひとりごと

「英会話スクール出逢い機関論」

2002年12月24日

特許明細書が書き上がりません。

最近、クリスマスの思い出と言うと、特許を執筆していた記憶以外にありま せん。

時期的にも、下期の特許提出の時期にぶつかることもあって、私にとって、 「クリパ」と言われれば、クリスマスパーティなんぞではなく、クリスマスパ テント(特許)です。

本当は、このような愚にもつかない駄文を書いている間に、明細書の第二の 実施例を執筆しなければいけないのですが、システム構成図を書き直すのが面 倒なのです。

なんとか手を抜けないかと、現実逃避の考案をしている時、私の駄文執筆能 力は、最高潮に達するようです。

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嫁さんの気質や思想やポリシーに影響されるところ大なのですが、私は、結 婚してから色々なことから解放され自由になり、人生が楽に、そして楽しくな りました。

また、嫁さんとは関係なく、結婚というシステムの観点からだけでも、いく つかのことから自由になったことがあります。

その中の一つに、「クリスマス脅迫症候群」とも言うべきものがあります。

この時期、駅前、商店街、デパート、繁華街、どこにいても出現する緑と赤 の装飾、巨大なクリスマスツリーの電飾イルミネーション、そして、どこまで もしつこく追いかけてくるクリスマスソング。

会社の帰りに、夕食のコロッケを買っているところに、ユーミンや山下達郎 なんぞ、出現させるんじゃない(ちと古いが)。

若い頃、私は、

一人で街を歩いたら、いかんのか!

と怒鳴りたくなる衝動にかられていました。

そのようなものから逃げる為に、イブの夜に嫁さんに担保をお願いしていた 若い頃の自分は、愚かだったと思います。

だが、この青春の愚かなプロセスなくして、今の家庭や家族がないのも、ま た真実です。

その時、若さ故の愚かさを、シニカルに笑っていただけなら、今、食卓を囲 んで家族で笑っていることはできなかったでしょう。

逆説的な結論ではありますが、「クリスマス脅迫症候群」によって「クリス マス脅迫症候群」から離脱する、というこの一連の理論は、物質が他の物質に 変化するプロセスで、一時的に高エネルギー状態に至らなければならないとい う「励起状態」を思い起こさせます。

いずれにしても、今の私には、街中のクリスマスソングも、電車の中で若い 恋人達がいちゃつく様も(そして愚にもつかない彼等の会話も)、まるで、梅が 咲きほこる雅な茶会の席で、俳句をしたためながら、ホトトギスの声を遠くに 聞くくらい、気になりません。

ともあれ、こういう下らない脅迫観念から離脱できただけでも、結婚は私に とって意義があったと断言できます。

閑話休題。

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実際のところ、一体どれ程の効果があるのだろうか良くわからない「英会話ス クール」ですが、この不景気日本にあって、しぶとく生き残っているようです。

先日、先輩と話していた時に、「英会話スクール」の目的は、勿論英会話の 向上にあることの他、「異性と出逢う場」としての役割もあるそうです。

なるほど。

そういうことなら、あのふざけた高価な授業料も、投資としてはむしろ安い。

個人を主体とする現代の社会構造上、異性と出逢うチャンスがないと言うの は、至極当然のことではあるのですが、出逢いを求めている当の本人達にとっ ては、深刻な問題です。

近い未来、自力で彼氏や彼女を見つけてきた者は、会社や地元の自治会から 表彰されるような未来がくる、と私は真面目に考えております。

実際、政府が国営のお見合い期間の設立に動いています(2002年11月14日の 朝日新聞より)

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これは本当の話ですが、私は10年も前に、日立のスーパーコンピュータのア プリケーションとして「お見合いシステム」を提言していました。

スーパーコンピュータの性能と言うと、円周率の計算くらいしかやることが ないように思われていますが、これからのスーパーコンピュータはスペックは、 MIPSやディスクアクセス速度、トランザクション処理数などではありません。

目標は、単位時間あたりに、どれだけの大量のカップルを生成させることが できるか、そして、そのカップルをどれだけの時間維持させえるか、さらには、 定着率(結婚率)などが競われるようになる、と予言していました。

MTTR(Mean Time To Repair 平均修復時間)は、システムの平均復旧時間から、 カップルの平均復旧時間へと解釈が変更され、MTBF(Mean Time Between Failure 平均故障間隔)は、言うまでもなく、カップルの平均交際停止間隔と 解釈される訳です。

こんな風に考えていくと、「システム」と「恋愛」は恐しく良く似ているこ とに気がつきます。

セキュリティの観点から言えば、機密性、可用性、抑制機能、予防機能、回 復機能等、メンテナンスの観点からは、初期不良、経年劣化、リプレース・・・

まあ、この辺で止めておきましょう。

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結婚の問題とは関係なく、異性と付き合うことは、それ自体が人生を豊かに するし、そもそも楽しいものです。

勿論、苦しさや面倒も半端じゃありませんが。

この機会を、英会話スクールが提供しているのだとすれば、大変コストパフォー マンスな「場の提供」と言えるでしょうし、次世代の新しいコミュニティ創成 の場として大変有望なものであると、私は考えました。

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「そうかな?」

私が得意げに、「英会話スクール出逢い機関論」を唱えていると、嫁さんが 異議をはさんできました。

私 :「どうして? 出会い系のメールやWebなどに比べて、身元や面が割れ

る分、健全で安全で安心だし、勉強で集うと言う点も、さらに高品

質のフィルターを通っているとも解釈できるぞ」

嫁さん:「『出逢う』為には、男性と女性が、少なくとも同じクラスにいなけ

ればいけないよね」

私 :「そりゃ、まあね」

嫁さん:「で、まあ当然、英会話を始める人なら、初級コースから入会するよね」

私 :「そうだろうね」

嫁さん:「自然に無理なく親しくなるためには、それなりに時間もかかるよね」

私 :「あからさまに、『異性を探しています』てな感じの奴なんて、いや

だろうからな」

嫁さん:「英会話クラスの初級コースなんぞに、うだうだといつまでも居残っ

ている男ってことは、『私には将来性がありませんよ』と宣言して

いるようなものじゃない? 私なら、私と同じクラスにいるような

男は嫌だな」

私 :「・・・あっ」

盲点でした。

確かに、そんな将来性の見えない異性を探しすために、金を出しているとし たら、投資以前の問題です。

金をドブに捨てているようなものです。

嫁さんの提示したアンチテーゼは、英会話スクール以外にも、テニススクー ル、その他のスクール全部に適用が可能のようです。

いつまでたっても、初級コースから抜けられない野郎と付き会いたい女性は 少ないだろうからです。

むしろ、検討除外の明確な指針となってしまう恐れもあります。

まあ、別の異性へのアクセスのポインタくらいにはなるのかもしれませんが。

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「出逢い」が難しい時代になりました。

「出逢い」を構築するために、自分ではない、不本意な自分を演出する必要 性に苦しんでいる人も多いと思います。

口ばかりが上手くて、綺麗に装うのが上手い奴だけが、出逢いの門に立てる のだろうかと問われれば、私は自信を持って答えることができます。

その通りです。

ですから、「一緒になって貰うために、地に這いつくばい、泥をすすり、自 尊心を投げうって、彼女の足を舐めるような屈辱を経て、結婚を承諾して貰っ た」(http://www.kobore.net/mail8.txtより抜粋)と言う、私の尊敬する人の 言葉が、私の胸を熱く打つのです。

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クリスマスイブの今日、私より皆さんに、新約聖書の「マタイによる福音書」 7章13節を贈ります。

「狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きくその道は広い。そして、そこ からはいって行く者が多い。命にいたる門は狭くその道は細い。そして、それ を見いだす者が少ない」

最後に、江端による福音書、第3節A項の第5号にて、今日はお別れしたいと 思います。

皆さん、よいクリスマスを。

「狭い門から入る必要なんぞないし、できれば避けたいのは山々だが、本当の 自分を好きになってくれる人と出逢う為の門は狭い。天国の門なんぞお話にな らんくらい狭い。ナノテクノロジーですら解決できないほど狭い。とにかくう んざりするほど狭い。それを見いだす者は、かなり運が良い」

(本文章は、全文を掲載し、内容を一切変更せず、著者を明記する限りにおい て、自由に転載して頂いて構いません。)