特段の記載がない限り、江端智一は本ページの批判コメントを、理解し、認定しているものとします。
本ページの目的は以下の通りです。
技術分野の誤った知識の流布は、皆さんの不測の不利益となります。
一方、それを恐れるあまり、「何もしない」というのは、私の思いに反します。
そこで、これらの、利益・不利益の調和点として、「原文そのまま」「批判コメント全開示」という方法を案出致しました。
当面、この方法による運用を続けさせて頂きたいと思っております。
何卒、ご理解、ご協力を頂けますよう、よろしくお願い致します。
私の人格と著作の品位を踏みにじる最低最悪の罵詈雑言のメッセージを投げつけてきた「あなた」に伺いたい
また、全ての読者の皆さまに、お願いしたいこと(「4.13メッセージ」)があります。
江端が作り出してしまった「誤った情報」の流布を止めて頂けますよう、ご協力の程、よろしくお願い致します。
同人誌関連では以下を読んでいます。
M様
まず、各論に入る前に「消尽論」に関しまして、私の理解の確認も兼ねて、記述してみます。
まず、(いきなりですが)特許法からお話させて下さい。
BBS事件の最高裁判決におきまして、「国内消尽論」は肯定され、「国外消尽論」は否定されました。
但し「国際消尽論」が否定されましたが、真正商品の平行輸入に関するものについては、3つの条件を満さない場合について、特許権者は国内において特許製品を支配する権利を黙示的に授与したものとして、侵害の実質的違法性が否定されるに至りました(最判平成9年7月1日、平成7年(オ)第1988号)。
現在、この法律の解釈で特許法は運用されております。
さて、ここで特許権の効力とは、特許法68条に規定されており、その特許権の効力を画する概念としての特許発明の実施については、特許法第2条3項各号に規定されておりますが、正当権限を有する権利者または権利者から許諾されたものによって譲渡された特許発明の技術的範囲に属す製品に関しては、その譲渡および使用について、特許権の効力は及ばない、と解されます(特許権の消尽論)。
これは、特許製品を購入したものが、それを「使う」ことや「他人に売る」ことまで、特許権の効力が及んだら、流通の世界が成立しなくなるからです。
また、一旦譲渡した当該製品について特許権の効力を与えて特許権者に二重利得を与える利益がないと考えるからです(これも、上記最判に記載があります)。
まず、ここまでは間違っていないと信じています。
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さて、それでは著作権法における「消尽論」は、どうなっているのかを、この度、この原稿を書く上で調べてみました。
まず、法律側からのアプローチしてみました。
消尽に関する著作権法上の規定としては、平成11年改正で導入された譲渡権(26条の2)について、譲渡による権利の消尽が明文化されています(同条2項)。なお、この消尽規定は強行規定であり当事者間の特約等で譲渡権の消尽を否定することはできないと解されています。
つまり、「法律に穴を明けるライセンス」でもこの消尽を否定できないというくらい強力な条文と解されています。いわば、愛人契約が、どんなに当事者の合意があっても、問答無用で「無効」にされるのと同様の効力を持つと解しま す。
次に、最高裁判決からのアプローチしてみました。
これは、今回のコラムの引例にも記載がありますが、平成14年04月25日最高裁判所第一小法廷判決(平成13(受)952)では、原告は
→「ゲームソフトは映画の著作物だ」
→「映画の著作物は消尽しないとされている」(26条の2第1項かっこがき→本当に映画「だけ」は例外扱いしています)
→「だから、BOOKOFFなどでゲームソフトの再販は、著作権の効力が及ぶのだ」
という論旨を展開したのですが、結果として原告敗訴で確定しました。
この理由が凄いので、よく覚えているのですが、こんな感じでした。
■「ゲームソフトは映画の著作物だ」というのは、認める。
でも、
■「だから消尽しないはずだ」というのは、認めない。
と最高裁判所は言い切りました。
その理由が、これです。
(1)映画の著作物にのみ頒布権が認められたのは,映画製作には多額の資本が投下されており,流通をコントロールして効率的に資本を回収する必要があったこと,著作権法制定当時,劇場用映画の取引については,前記のとおり専ら複製品の数次にわたる貸与を前提とするいわゆる配給制度の慣行が存在していたこと,著作権者の意図しない上映行為を規制することが困難であるため,その前段階である複製物の譲渡と貸与を含む頒布行為を規制する必要があったこと等の理由によるものである
(2)本件のように公衆に提示することを目的としない家庭用テレビゲーム機に用いられる映画の著作物の複製物の譲渡については,市場における商品の円滑な流通を確保するなど,上記(ア),(イ)及び(ウ)の観点から,当該著作物の複製物を公衆に譲渡する権利は,いったん適法に譲渡されたことにより,その目的を達成したものとして消尽し,もはや著作権の効力は,当該複製物を公衆に再譲渡する行為には及ばないものと解すべきである。
私なりに、無茶苦茶乱暴に纏めますと、「『スクリーンの映画』と『ゲーム』は、どう考えても、違い過ぎるだろう?」といっている訳です。
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さて、ここで法律と判例の2つからアプローチしましたが、(たぶん、それをするまでもなく)、
「正当権限者から譲渡された書籍(同人誌)について、その後の再譲渡には著作権(の中の譲渡権)の効力は及ばない」についての解釈は、誤っていないと信じます。
映画の著作物と認定された「ゲーム」ですら消尽するのです。原作者の許諾を得ている同人誌については、当然に消尽が適用されると思います。
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さて、ここまでが前提です。
ここから本論になります。
まず、簡単に理解する為に、(正確ではありませんが)「同人誌とは、原作者と二次的著作者の、二人による共同製作物のようなものであり、二人とも別々に著作権を持っている」と理解して、以下を読んで下さい。
> 上記の部分ですが、知的財産権は、@権利者から許諾を受けて二次作品を制作し、販売された物は、転売不可
→ 転売可と思います。
原作者の許諾を得ているということは、原作者は当然にその二次的著作物が販売されていることを前提に許諾していると考えるのが定説です。
「私はそう考えていなかったぞ」と後から言い張っても、26条の2第2項の強行規定が働きますので、法律も裁判所も認めません。そもそも、それなら、最初から「許諾」なぞ、しなければ良いからです。
しかし、原作者の許諾を得ていないものについては、「転売不可」と思います。
原作者の権利については消尽論が機能しません。つまり、再販を続ければ、再販する度に、原作者の著作権侵害が発生します。
そもそも、二次的著作者の行為が完全にアウトです。許諾を得ていないので、その二次的著作物を創作した段階で侵害(21条)、売った段階で侵害(26条の2)、それを展示した段階でも侵害(25条)、インターネットに掲示した段階でも侵害(23条)、貸しても侵害(26条の3)です。
で、さらに酷いことに、それを再販した人にも、上記と同じ侵害が発生するのです(この場合、譲渡された人は、怒って良いので、同人誌の製作者に損害賠償請求ができるはずです)。
原作者の許諾を得ていない同人誌は、原作者の権利については消尽しないので、何をしても、どこまでいっても著作権侵害の無限連鎖が続くことになるのです。
但し、二次的著作者の二次的著作物の範囲(つまり原作のキャラクターを引き算した、オリジナルのキャラクターやら背景やら)では、侵害は発生しません。その範囲についてのみ、消尽するからです。
> A権利者が製作した作品を譲受した場合については、その後は転売可(消尽論)
こちらは@との関係がよく分かりませんでしたが、原作者と二次著作者の両方がO.K.といっているのであれば、両方の権利が消尽します。100回転売しても、著作権侵害の問題は発生しないと考えます。
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私が、赤松先生を「凄い」と思ったのは、この「消尽論への挑戦」を行っていると見えたからです(誤解しているかもしれませんが)。
この話を聞いた時に、背筋がゾクっとしたのを良く覚えています。
「許諾したら消尽してしまう」v.s. 「許諾しなければ、同人誌が出版できない」
つまり「全部許すか」「全部許さないか」の2つしかない取り得ない法律に対して、「黙認」という、ビックリするようなアプローチで迫ってきたことに、私は心底感動したのです。
(ただ、今回は記載しませんでしたが、「黙認ライセンス」は、司法によって、「許諾と同じである」と判断される可能性が高いです。これは、実際に裁判になってみないと分かりません)
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> 「マンガ家がそのような権利を簡単に行使できるとすれば、誰もマンガを買わなくなって、二次創作同人誌をつくった人はもちろん、その創作に許諾をしたマンガ家までも不利益になると考えるためです」のこの部分についても、原作と同人誌の再販について合わせて論じてしまうと、ちょっとわかりづらい気がします。
これは、私も気がついていまして、ちょっと悩んだところです。無理して突っ込んだ感じはあります。
しかし、これを説明する為には「消尽論」をキチンと説明しなければならず、この説明を読んでくれる人は、ほとんどいないだろうなー、と考えました。
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という訳で、ここから修正案に入らせて頂きます。
ここから、ちょっと法律の解釈の話になりますが、一般的に、一度マンガ家の許諾を得て創作された二次創作同人誌を、その作者が販売した場合、その後の再販等には著作権の効力が及ばないという考え方が通説です(消尽論)。
つまり、一旦、コミケで販売されたなら、その後、その同人誌をいつ、どこで、誰に売ろうとも、許諾をしたマンガ家は「とやかく言えない」ことになっています。
なぜ、これが通説になっているかと言えば、そのような文句がまかり通れば、BOOK-OFF(ブックオフ)などに代表される古本販売業界は全滅してしまいますし、マンガ家がそのような権利を簡単に行使できるとすれば、誰もマンガを買わなくなって、二次創作同人誌をつくった人はもちろん、その創作に許諾をしたマンガ家までも不利益になると考えるためです【注5】。
ここから、ちょっと法律の解釈の話になりますが、一般的に、一度マンガ家の許諾を得て創作された二次創作同人誌を、コミケ会場で同人誌の作者自身で誰かに販売してしまったら、どうなると思いますか?
その後、その同人誌が、原価の100倍の値段で転売されようが、オークションに出品されようが、原作者のマンガ家も、同人誌の作者も、「とやかく言えない」ことになっています(著作権法26条の2第2項)。
たとえ、原作者のマンガ家と同人誌の作者が、「友達同士の売買ならいいけど、古本屋へ転売はダメ」とか「タダの譲渡しかダメ」というライセンスが付しても、その内容については無効であると解釈されます。たとえライセンスであっても、穴の開けることのできないケース(強行規定)もあるのです。
それに、自由に売買もできないようなマンガや同人誌を、誰が欲しいと思うでしょうか。「私が買ったものを私がどうしようが、私の勝手だろうが」と考えるのは自然です。
仮に、そのようなライセンスが有効と判断されれば、BOOK-OFF(ブックオフ)などに代表される古本販売業界は全滅でしょう。
さらに、そんなマンガや同人誌は、結局売れなくなってしまい、結局、誰も幸せにならないと考えるからです(消尽論)【注5】。
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上記の修正案についても、原作者と二次著作者を分離せずに取り扱っております。
「ここをキレイにキチンと論述しろ」とのご依頼を頂けましたら、対応致します。
先ずは、ここまでで、本メールをお返し致します。
2013年8月6日(火)
江端智一